北九州市の連続監禁殺人事件で7件の殺人罪などに問われた松永太(46)
、緒方純子(45)両被告に対する控訴審で、福岡高裁(虎井寧夫裁判長)
は26日、緒方被告について死刑を言い渡した1審・福岡地裁小倉支部判決
(05年9月)を破棄し、無期懲役を言い渡した。一方、松永被告の控訴は
棄却し、1審通り死刑を言い渡した。6件の殺人罪を認定しながら無期懲役を
言い渡すのは極めて異例。虎井裁判長は「松永被告の主導の下、適法行為
の期待可能性が限定され、追従的に関与した」と述べた。

 通電や食事を与えないなどの虐待が常態化し、緒方被告一家ら7人の命が
相次いで奪われた「犯罪史上まれに見る凶悪事件」は、すべての遺体が解
体処分され骨も海に捨てられた。「死体なき殺人」のため、事実認定の柱
は、両被告と、02年3月に逃走して事件発覚のきっかけとなった監禁被害
女性(23)の供述にほぼ限られた。

 今年1月以来、計9回開かれた控訴審公判の最大の争点は、松永被告
から緒方被告への通電虐待による「絶対的支配と服従関係」の有無。「支
配で意思が抑圧され、犯罪の道具として使われた」とする緒方被告に対し
、松永被告が激しく応酬する対立構図となった。

 1審でおおむね事実を認めた緒方被告は、控訴審で「虐待で松永被告
に支配され、人格障害や解離症状が生まれた。責任能力を喪失し、殺害
行為の道具として利用されただけ」と指摘。松永被告による間接正犯(他
人の手を介して実行する犯罪)に当たるとして、一転無罪を主張した。自
ら実行しなかった殺害については「松永被告との共謀は成立せず、せいぜ
いほう助」とした。弁護人が申請した精神鑑定は却下された。

 松永被告は「殺害の実行も指示もしていない」と1審同様に無罪を主張
する一方で、緒方被告の主張に「絶対的支配の実態はなく、逃げることも
できた。(緒方被告が)責任軽減のために松永被告に転嫁している」と反
論。逆に「大分県で別の殺人事件を起こした緒方被告が、これを知った一
家の口を封じるために殺害した」と指摘した。

 1審判決によると、両被告は同市小倉北区のマンションで、監禁被害女
性の父(当時34歳)に通電虐待を繰り返して96年2月に殺害。98
年1~6月には、緒方被告の母(同58歳)と妹夫婦一家4人の計5
人の首を絞めたり、虐待して殺害した。97年12月には、緒方被告の
父(同61歳)を通電虐待により死亡させた。

【石川淳一】

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